説明
実梅 | ||
花梅 | 野梅系(野梅性・難波性・紅筆性・青軸性) | 変異種 |
緋梅系(紅梅性・緋梅性・唐梅性) | ||
豊後系(豊後性・杏性) |
梅は変異性の強い植物で、実の大小、花弁の形、雌シベ、雄シべなど各種器官が多彩な変化をくり返す。
その品種は、登録品種だけでも400種。
地方品種などを加えると一説には、7,600種ともいわれている。
梅は、園芸学的に分類すると、実の採取を目的として栽培される 「実梅 (ミウメ)」と、
花の観賞を目的とする 「花梅(ハナウメ)」とに分けられる。
実梅(みうめ)は、全国的に栽培されている品種は少なく、その土地の気候風上に適含した地方品種が植えられている。
花梅は 「3系 (ケイ)9性 (ショウ)」に分類され、それぞれに変異種がある。
野梅から変化した原種に近い梅。
中国から渡来した梅の子孫と言われる。
枝は細く、花も葉も比較的小さい。
花や葉も小ぶりだが、とてもよい香りがする。
【判断のポイント】
この系統に属する品種は若枝の陽光面が少し濃い色をしている。一方、陽が当たらない裏面は緑色。
※品種によって程度の差が大小ある
野梅系の若枝。陽が当たる面は日焼けしたような色合いになる
野梅性【やばいしょう】
原種に近い梅。枝が細くトゲ状の小枝が多い。
新梢は緑色で、日焼けすると赤みがでる。葉は比較的小さく毛がない。
花は白または淡紅が多く、香りが高い。果実は丸い。
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小梅 | 鶯宿 |
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冬至 | 寒紅 |
難波性【なにわしょう】
枝は細くてよく茂り、矮小気味。トゲ状の小枝が少ない。葉は丸葉。
比較的晩咲き。花の香りが良い。差し木可能のものが多い。
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御所紅 | 浮牡丹 |
紅筆性【べにふでしょう】
蕾の先が紅く、尖(とが)っている。
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紅筆 | 西王母 |
青軸性【あおじくしょう】
枝やガクは常に緑色で、蕾も緑白色。花は青白色
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緑萼 | 月の桂 |
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月影 | 金獅子 |
野梅系から変化したもの。枝や幹の内部が紅い。
花は紅色、緋色のものがほとんど。
白花でも枝の髄が紅いものはこの緋梅系に入る。
葉は小さく、木の性質は野梅性に近い。
庭木や盆栽に使われるものが多い。
【判断のポイント】
枝の髄が赤いのが特徴で、そこを確認できれば判断は簡単。髄の色を確認できない場合、若枝が全体的に浅黒いのが見分けポイント。“緋梅”という名前がついているが、白花の品種も一部あるので、注意が必要(※白花でも枝の髄が赤ければ緋梅系に分類するため)。
梅の枝断面。髄が赤い左の枝が緋梅系(写真提供:亀田龍吉)
紅梅性【こうばいしょう】
花色が明るい紅色をしているもの。極少ないが、白花のものも含まれる。
新梢は日焼けしても緋梅性ほど濃くならず、青みが残る。
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大盃 | 鈴鹿の関 |
緋梅性【ひばいしょう】
花色が濃い紅色〜緋色をしているもの。
新梢は日焼けすると黒褐色になる。多くは樹勢が弱い
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鹿児島江 | 幾世寝覚 |
唐梅性【とうばいしょう】
花色は咲き始めは桃色〜紅色で、咲き終わりには白っぽくなる。
花が下向きで、花柄が長いものが主流。
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八重唐梅 | 夫婦梅枝垂れ |
梅と杏(アンズ)との雑種。
葉は大きく、育ちの良いものが多い。
アンズに近く花は桃色のものが多い。
【判断のポイント】
遠目に見ても全体に枝が赤っぽく(特に若枝)、節がごつごつするのが特徴。また、アンズの血が混じっているため野梅系や緋梅系に比べると開花が遅い品種が多い。
豊後系の枝。若枝は全体が赤い色をしていて、太い枝は節がゴツゴツしている
豊後性【ぶんごしょう】
アンズとの雑種性の強い梅。
枝はやや太く、樹勢は強い。
新梢が太く日焼けすると茶褐色になる。
葉は丸葉で大きく、表面に毛がある。
花は大輪で淡紅色のものが多く、晩咲き。
花の香りは低い。
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武蔵野 | 楊貴妃 |
杏性【あんずしょう】
豊後性よりも枝が細く、葉も小さい。
新梢が細く日焼けすると灰褐色になる。
葉は小さく表面に毛もない。
花は遅咲きのものが多く、香りは低い。
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江南所無 | 緋の袴 |
@錦性(ニシキショウ)
若枝に黄色の籠手型の斑紋を現し、中には、枝全体が黄色くなるものもある。
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東錦 | 鈴鹿の関 | 塒出の鷹 |
A筋入り
若枝に縦筋が入るもので、筋の色は種類によって異なり、白色・黒色・褐色・樺色(かばいろ)などがあり、濃さは日射条件や気温によって異なる。
写真は、筋入り月影
矢印の先が筋状になっているのがわかる。
その他に 春日野、筋入り茶萼などがある
B枝垂れ
枝が枝垂れるもので、非常に長く枝垂れる「長枝垂れ」や、それ程長くない「枝垂れ」があり、筋入りのものもある。
C咲き分け
一般に源平咲きとも言われ、一樹に紅と白の色々のタイプの花弁が入り混じって咲くことをいいます。
梅の咲き分けは、もともとは紅梅の木に白梅が咲きます。
赤い色はアントシアンという色素から作られますが、赤くなるための酵素がうまく働かないと、赤い色になれずに白い花のままのものが現れ「咲き分け」てしまうのです。
D花変わり
・茶筅(チャセン)梅:花弁が退化してシべだけが目立つ。
・本黄梅:クリーム色の細くて短い小さな花弁に、黄色の長いシべだけが目立つ。
・紅千鳥:雄しべが弁化した 旗弁が良くみられ、これを千鳥になそらえて名付けられている。
・舞扇:梅の花弁は5枚が普通だが、「舞扇」には注意して観察すると6枚以上のものが一樹の中に見ることができる。
その花弁を舞扇に見立てたのが「舞扇」の命名の由来である。
E絞り花
「日用」「東雲」のように花に絞りが入るものや、「東錦」 、「思いのまま」 のように色違いに咲き分けるものがある。
F極大輪
大輪のものとして八重咲きの「武蔵野」 が良く知られている。
G珍品・貴品
・香篆(こうてん):枝幹がクニヤクニヤに曲がって雲竜化していて、太い幹に瘤が出る。
・金獅子:節間が矯化し石化した枝は、屈曲して真っ直ぐには伸びない。その牙枝を椰子のタテガミにたとえて名付けられている。
・夫婦梅枝垂:2つの実が並んで付く。
・小緑萼:7つの花に2つ以上の実が付くことが多い。
散開(さんかい)
長短入り乱れてシべが散らばっているもの (緋梅)
正開(せいかい)
花の芯(花の中心。おしべとめしべ。花蕊(かずい))を中心に規則正しく広がっているもの (初雁)
束開(?)
シべが茶筅状に上に伸びているもの (巻立山)、(八重海裳)
抱え蘂
シべの先端が花の芯を抱え込むようになったもの
旗弁
雄しべの先端が花弁状になったもの (紅千鳥) 旗弁について詳しくはこちら
八重咲きはこれが発達したもの
花のつくりと部分の名前
被子植物(両性花)の花のつくり(模式図)
スイセンなどでは花冠の内側にもう一つ副花冠(ふくかかん)という花冠によく似たものがあります(上左の写真矢印)。
おしべは
めしべは花粉がつく